影向寺(ようごうじ)
- atsux.
- 7月31日
- 読了時間: 2分
更新日:8月4日
「散歩道」ブログへようこそ!
今回は、川崎市宮前区の閑静な住宅街にひっそりと佇む、天台宗の古刹、威徳山影向寺(いとくさんようごうじ)にやってまいりました。近くに遺跡が多く散歩コースにもなっています。
武蔵小杉駅北口の5番乗り場で鷺沼行きのバスに乗り、影向寺(ようごうじ)でバスを降りました。降りたバス停の反対側の丘の坂道を10分ほど登っていくと、こんもりと茂った欅や銀杏の林が見えてきて、そこにお寺の山門を見つけ出すことができました。


739年に創建されたと言われる影向寺(ようごうじ)。門をくぐると、その歴史の重みが伝わってきます。
薬師堂の手前には枝ぶりの良い百日紅(さるすべり)の木が二本植えられていて、境内に心地よい日陰を作ってくれています。裏手には樹齢600年、胸高周囲8メートルにもなる銀杏の巨木が立っています。この木は「影向寺の乳イチョウ」と呼ばれ「かながわの名木100選」に選ばれています。



本尊の薬師如来坐像と、その両脇に立つ日光・月光菩薩像は共に平安後期の作で、国の重要文化財に指定されています。御開帳は特別の日だけなので、直接拝みたいという方は、お寺のホームページをご覧になってから訪れることをお勧めします。
境内には茅葺型銅板葺屋根の観音堂、歴史を感じさせる鐘楼、聖徳太子堂、影向石、橘樹観音など、見どころがたくさんあります。一つ一つの建物をゆっくりと眺め、その歴史に思いを馳せる時間は、至福のひとときです。





境内を見渡すと、なんと、芭蕉(1644-1694)の句碑と、現代を代表する詩人西脇順三郎(1894-1982)の詩碑が並んでいました。

芭蕉の句碑には「春の夜は桜に明けてしまひけり」の句が刻まれていました。一方、西脇順三郎の詩碑には詩集『旅人かへらず』(1947)の中の一節「雲の水に映る頃/影向寺の坂を上る/薬師の巻き毛を数へる秋」が刻まれていました。
『おくのほそ道』(1702)の冒頭で「月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人なり」と言った俳人と、詩集『旅人かへらず』(1947)の中で「この世のあらゆる瞬間も/永劫の時間の一部/草の実の一粒も/永劫の空間の一部分」と詠った詩人が、この境内で時を超えて出会っていることに驚きを禁じえませんでした。発見と驚きは、まさに散歩のだいご味と言ってもよいでしょう。


散歩がてら、古い歴史に触れてみたい方、静かに自分と向き合いたい方、ぜひ一度、影向寺を訪れてみてはいかがでしょうか。きっと、忘れかけていた大切な何かを思い出させてくれるはずです。
それでは次回、「散歩道」ブログでまたお会いしましょう。
Comments